傾斜試験及び動揺試験方法
1.一般
復原性試験(重量重心査定試験)は、復原性規則に従って新造及び改造工事完了に近い状態(完成時が望ましい)で行い、重量重心、載荷重量及び動揺周期の算定を行うために必要な事項を測定する。
2.要領
傾斜試験は、1)の様に移動重量物を横方向に移動させることにより、船を傾斜させて行い、動揺試験は、小型船の場合人の移動でも可能であるが、移動重量物の揚げおろしやその他の方法により船を横揺れさせて行う。移動重量物の移動は、1)-Aの順序でおこなう。1)-B傾斜の計測は精密傾斜計又は下げ振りにより計測する。傾斜試験終了後、引き続き2)の様に動揺周期の測定を3回以上行う。
1)傾斜試験
A:試験用移動重量物の移動順序
左右舷対称の位置に移動重量物を置き、これを片舷へ移動せしめ、船体を傾斜させその傾斜角を測定し本船の重心位置、メタセンター高さ及びその他の事項を算定。
又は
B:傾斜の計測の下げ振り概略図
2)試験状態に於ける横揺れ周期測定 (動揺試験)
人員又は重量物の移動により、船を動揺させ周期 (a~iに至るまでの所要時間) を計測。
※ 一定周期の動揺を連続3回続けて計測し平均値をとる。
※ 所要時間計測員は2名以上。
3)試験用機材
- 移動用重量物
- 傾斜計又は下げ振り
- 試験用水槽(下げ振りの場合)
- 巻尺
- 比重計
- バケツ(比重計測用)
- ストップウォッチ
- はかり(重量計測用)
- 電卓
- 記録用紙
- 図面(必要なもの)
- その他必要とするもの
3.計測事項
1)軽荷重量に含まれない船内物件(おろすもの)の重量及び重心位置
- 諸タンク搭載量
- 機関室内の水・油及びビルジ
- 船底のビルジ
- 試験時の要員及び所持品
- 試験器材
- 一般斉備品に含まれる備品及び倉庫品
- 足場その他の雑物件
2)試験時の未搭載物件の重量と位置
3)前部及び後部の吃水、海水比重、風向、風速
4)傾斜計又は下げ振りの読み
5)試験用重量物の移動距離
6)動揺周期(3回以上)
注意事項
1.傾斜試験
復原性試験等を実施する場合には、次に留意すること。
1)船舶はなるべく次の状態で試験を行うこと。
- 完成に近い状態
- トリムはLの2/100以内
ただし、調整できない場合は、そのトリム状態の排水量等を推定できる排水量等曲線図を使用して計算する。 - 搭載物を所定の位置に搭載した軽荷状態に近い状態
- 水、油等のタンクを空又は満載にした状態
2)試験に当たっては次の事項に注意すること。
- 移動荷重は、誤差を生じない傾斜角度(2度程度)となる質量のものとすること。
- 移動荷重を両げんに分けておくときは、その質量を等しくすること。
- 移動荷重は、移動したとき船舶が横傾斜以外の傾斜をしないように配置すること。
- 試験を行っているときは、人の移動を禁止し風等のため係留索が張らないようにすること。
2.動揺試験
1)船舶はなるべく次の状態で試験を行うこと。
- 傾斜試験を行った状態
- 船底と海底との間隔は過度に小でない状態